算定できる利用者は?ADL維持等加算の算定要件をわかりやすく解説
これまで通所介護(デイサービス)では、自立支援にむけた取り組みを評価する仕組みが確立されておらず、曖昧な目標や支援が「お世話型のサービス」を招き、生活の不活発を助長しているのではないかと言われてきました。
要介護度の改善や日常生活の自立に焦点を当てた「自立型のサービス」を推進するため、平成30年度の介護報酬改定では、ADL維持等加算が新しく算定できるようになり、日常生活自立度の向上に向けた取り組みが評価されるようになりました。
ADL維持等加算の算定要件は、やや複雑で手間や負担もかかるという理由から敬遠されがちですが、理解ができると意外と簡単に算定が可能です。今回、ADL維持等加算について算定要件や利用者の特定方法などわかりやすく解説します。
ADL維持等加算の単位と算定要件
ADL維持等加算は、要介護状態の重症化予防、高齢者の生活機能の向上と自立支援につなげるため、日常生活の自立を支援することに焦点が当てられており、日常生活動作(ADL)の維持もしくは改善の度合いを一定水準以上に保つ取り組みをした場合に評価される加算です。
│ADL維持等加算(I)と(II)の単位
ADL維持等加算には、ADL維持等加算(I)と(II)の2種類があります。
◎ADL維持等加算(I)……1月につき3単位
下記に詳しく説明する「算定要件」をすべて満たせば、次年度は全ての利用者に算定が可能です。
◎ADL維持等加算(II)……1月につき6単位
ADL維持等加算(I)の要件をすべて満たし、当該通所介護事業所の利用者について、加算を算定する月にADL評価を行い、その結果を厚生労働省に提出すれば算定が可能です。留意事項としてADL維持等加算(I)及び(II)の併算定はできません。
│算定要件について
ADL維持等加算は、日常生活動作の改善の度合いを一定水準以上に保つ取り組みを行う事業所が評価される仕組みとなっています。そのため、成果が出やすい「軽度者」や比較的改善が見込まれやすい「初回介護認定から日が浅い」利用者に偏らないよう配慮された内容になっています。
算定要件は下記の5つです。
- 算定できる利用者が20人以上いること
- 要介護3以上の割合が全体の15%以上であること
- 初回の介護認定から12か月以内の割合が全体の15%未満であること
- Barthel Index(BI)を用いたADL評価を初回月と、その6か月目に行い、そのADL値を月ごとに厚生労働省に提出した割合が90%以上であること
- 4の各利用者のうち6か月目の値から1か月目の値を引いたものが大きい順に並べ、上位85%を特定します。それらについて、ADLが改善したものを「1」、不変の場合は「0」、悪化していたら「-1」として、合計したものが0以上であること
算定できる利用者を特定する方法
ADL維持等加算の算定方法は、やや複雑で手間や負担もかかるという理由で敬遠されがちですが、その要因には、算定に必要な「利用者の特定方法」が少しだけ複雑であるということです。
順を追って理解すればそれほど難しいものではありません。以下に利用者の特定方法について解説します。
ステップその1│利用者の評価対象期間と評価対象利用期間を明確にする
加算を算定しようとする月の前年1月から12月までの期間が「評価対象期間」となります。それに対して、「評価対象利用期間」は利用者が通所介護を6か月連続して利用した期間となります。名前が似ているので混合しないよう注意しましょう。
ステップその2│当該通所介護を連続して6か月以上利用した利用者を特定する
「評価対象期間」に6か月以上連続して利用している利用者を特定します。評価対象期間は前年の12月までなので、翌年4月以降はじめてADL維持等加算を算定しようとすると前年の7月に評価を開始しなければ間に合わなくなりますので注意して下さい。
ステップその3│5時間以上の通所介護費の算定回数が多い利用者を特定する
6か月連続して利用した評価対象利用期間を満たす利用者について、5時間以上の通所介護費の算定回数が5時間未満の算定回数より多い利用者を特定します。
バーセルインデックス(Barthel Index)とは
ADL維持等加算では、日常生活動作(ADL)の維持もしくは改善の度合いを一定水準以上に保つ取り組みをした場合に評価される加算で、効果を測定するための指標としてバーセルインデックス(BI)を用いることになります。
バーセルインデックスは、食事や整容、更衣動作、移動から排便・排泄まで、日常生活動作を10種類に分類し、利用者が精一杯頑張れば「できる」日常生活(ADL)動作の能力を把握するための指標です。
その全10項目について「0点・5点・10点・15点」で採点します。合計は満点が100点となります。評価項目にはそれぞれの配点と判定基準・方法があり、慣れてくると比較的早く正確に採点ができるようなります。
│BI利得の計算方法
最初の1か月目のBI値を6か月目のBI値から控除した値がBI利得となります。
例えば、どんどん改善していく利用者の場合、最初の1か月目のBI値が50であり、6か月目のBI値が70となる場合があります。この際のBI利得は20となります。逆に、体調を崩し悪化していく利用者の場合であれば、最初の1か月目のBI値が60であったのに、6か月目には、40まで下がってしまったという場合もあります。その際のBI利得は-20となります。
算定する事業所は少ない?ADL維持等加算の課題とは
厚生労働省「社会保障審議会・介護給付費分科会」の報告によれば、ADL維持等加算(II)を算定している事業所は非常に少なく、低い取得率の背景には、下記の要因があると言われています。
│算定要件に当てはまる重度の利用者の数が少ない
ADL維持等加算は、要介護3~5の利用者割合が全体の15%以上であることが要件の一つになっています。そのため、重度の利用者が多くいれば問題はないのですが、一般的な通所介護の利用者構成割合で考えたら、要介護1と2が占める割合が多く、要介護度の割合が要因となって算定できていないと考えられます。
│評価の負担が大きく、かけた負担に比べて加算単位数が少ない
バーセルインデックスを用いた評価負担が要因になっている場合もあります。リハビリ等専門職であれば、日常的にBIを評価指標として活用しているかもしれません。しかし、慣れない職員が実施するとなると手間や負担も大きくなってしまい、なかなか前に進まないのが現状だと思います。
また、2020年厚生労働省『介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業』の報告によれば、「ADL維持等加算について緩和・改善してほしいこと」についての調査で最も多かったのは「加算単位数」であり、 評価の負担が大きく、かけた負担に比べて加算単位数が少ないというのも取得率を低くしている要因かもしれません。
まとめ│介護保険制度の改定を視野に入れて算定の準備を
今回、ADL維持等加算の算定要件について解説しました。ADL維持等加算の算定要件は、やや複雑で手間や負担もかかるという理由から敬遠されがちですが、理解ができると意外に算定は簡単です。
現状では、要件の複雑さや手間に見合うだけの単位ではありませんが、ADL維持等加算については、今後も要介護状態の重症化予防、高齢者の生活機能の向上と自立支援につなげるための取り組みを促す重要な加算となるため、次回改定に注目しておく必要があります。
ADL維持等加算のように、「なんだか大変そう」という理由で算定していない加算や、内容が難しそうなものでも検討してみると意外と簡単に算定できてしまう加算が隠れているかもしれません。雲紙舎ケアサポートでは、こうした課題を解決するレセプト請求業務代行サービスを行うプロ集団です。介護事業所の事務負担を解決し、適切な介護運営をサポートしてくれる強い味方です。ご興味のある方は是非、一度ご連絡ください。
■特徴1.以下の業態に対応可能!
デイサービス(通所介護)、訪問介護・訪問看護、特別養護老人ホーム、グループホームなど
■特徴2.お急ぎの場合でも対応可能!
あらゆる種類の介護保険請求ソフトに対応してますので、1週間以内に代行が可能です。
■特徴3.情報セキュリティ完備!
プライバシーマークも取得済みでございます。
大切な利用者様の情報を安心してお送りくださいませ。
■特徴4.請求事務以外にも対応!
実績入力、ケアマネージャーへのFAX送付、国保連への伝送、利用者負担の利用料請求、新規利用者の登録作業まで、あらゆる介護事務に対応しています。
請求業務でお悩みの経営者の方からのご相談をお待ちしております。
