違いがすっきり!認知症加算の算定要件と介護従事者の研修
通所介護サービスを提供することにより算定できる加算には、似たような名称や、似たような内容のものが沢山あり、どんな時にどのような項目を算定したらよいのかと頭を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、介護が必要な認知症高齢者に対して支援した際の加算は、いくつもあるため混合されやすく注意が必要です。
今回、認知症加算の算定要件に触れながら、混合されがちな中重度者ケア加算との算定要件の違いや併算定する場合の注意点、さらには、認知症加算の人員配置において必要になる認知症介護実践者研修等について解説したいと思います。
認知症支援に対する介護報酬の違い
介護を必要とする認知症高齢者は年々増加する中で認知症高齢者への支援がますます評価され、認知症に関する加算が介護報酬改定の度に新設されています。
類似しているものも含めるとその数は非常に多くなりました。似たような名称で、似たような内容のものがあるので、代表的な加算と単位について簡単に紹介します。
│認知症ケア加算と単位
認知症ケア加算とは、日常生活に支障をきたす症状や行動がある認知症高齢者に対して、介護保険施設サービスを行ったときに算定できます。在宅を目指し、認知症専門の棟において適切なケアを受けている、日常生活自立度III以上の認知症高齢者が対象です。
認知症ケア加算の取得単位数は、1日76単位です。
│認知症加算(小規模多機能型居宅介護、複合型サービス)と単位
小規模多機能居宅介護、複合サービスを利用する認知症高齢者への対応を評価したもので、認知症加算IとIIの2種類があります。
認知症加算Iの対象は、日常生活に支障をきたす症状又は行動があり、介護を必要とした認知症高齢者で、日常生活自立度のランクIII、IV又はMに該当する利用者となります。取得単位数は、1月800単位です。
認知症加算IIの対象は、要介護二で、日常生活場面で周囲からの注意を必要とする認知症高齢者であり、日常生活自立度のランクIIに該当する利用者となります。取得単位数は1月500単位です。
居宅介護支援における認知症加算については、次の項目で詳しく解説していきます。
認知症加算の算定要件とは
居宅介護支援における認知症加算の単位は1日あたり60単位です。認知症加算の算定要件として以下の3つのポイントをしっかり押さえることが大切です。
│ポイント1.利用者要件
前年度か算定月の前3か月間の利用者総数のうち日常生活自立度ランクIII・IV・又はMに該当する者の占める割合が20%以上であること。
◎日常生活自立度の確認方法
日常生活自立度は、ほとんどが医師の判定結果か主治医意見書によって決定されます。
しかし、複数の判定結果がある場合は、直近の判定結果とします。医師の判定がない場合もあるため、その際は、認定調査員が記入した「認定調査票」の「認知症高齢者の日常生活自立度」欄の記載を用いることとなっています。
介護支援専門員はサービス担当者会議などで、認知症高齢者の日常生活自立度も含めて情報共有を行います。
│ポイント2.人員要件
通所介護の人員基準に定めのある配置人数に加えて、看護職員か介護職員を常勤換算で2名以上配置すること。
│ポイント3.研修修了要件
サービス提供時間を通じて、専従で当該指定通所介護の提供にあたる認知症介護実践者研修等修了者1名以上の配置が必要です。なお、修了者は他の加算要件の職員との兼務は認められていませんので注意してください。
認知症加算と中重度者ケア体制加算の違いは?
通所介護サービスにおいて介護が必要な認知症高齢者の支援で算定できる『認知症加算』と『中重度者ケア体制加算』は、算定要件で混合されやすく、特に人員要件については、注意が必要です。違いを下の表にまとめました。
認知症加算 | 中重度者ケア加算 | |
利用者要件 | 前年度か算定月の前3か月間の実人数または延べ人数のうち日常生活自立度ランクIII・IV・又はMに該当する者の占める割合が20%以上であること。 | 前年度か算定月の前3か月間の実人数または延べ人数のうち、要介護3以上の利用者が30%以上であること。 |
人員要件 | 人員基準を満たす配置人数とは別に、看護・介護職員を常勤換算で2名以上配置すること。 認知症介護実践者研修等を修了し、サービス提供時間を通じて、専従で当該指定通所介護の提供にあたる職員を1名以上配置していること。 |
人員基準を満たす配置人数とは別に、看護・介護職員を常勤換算で2以上配置すること。 サービス提供時間を通じて、他の職務を兼務していない専従の看護職員を1名以上配置していること。 |
算定単位 | 1日あたり60単位 | 1日当たり45単位 |
│認知症加算が「難しい」と思われる理由
認知症加算は、人員基準を満たす必要人数とは別に、看護又は介護職員を常勤換算で2名以上配置しなければなりません。
加えて、認知症介護実践者研修等修了者1名以上を、サービス提供時間を通じて別に配置する必要があります。
また、研修修了者は他の加算要件の職員との兼務は認められていないということからも人員確保が難しく、大規模事業所に比べ小規模事業所で人員条件を満たすのはハードルが高くなる傾向にあります。
認知症加算に求められる介護従事者の研修
認知症の支援には、研修の内容によって『認知症介護基礎研修』から始まり、『認知症介護実践者研修』『認知症介護実践者リーダー研修』『認知症介護指導者研修』の順番でキャリアアップ可能な研修体系となっています。
認知症加算の研修修了要件である認知症介護実践者研修等には、「認知症介護指導者研修」、「認知症介護実践リーダー研修」、「認知症介護実践者研修」の3種類があります。それぞれの目的、受講資格、研修の主な内容について確認しておきましょう。
│認知症介護指導者研修
認知症介護基礎研修及び認知症介護実践者研修を企画・立案し、講義、演習、実習を担当することができる能力を身につけます。
介護保険施設・事業者等における介護の質改善について指導する能力を修得するのが目的です。
◎受講資格
受講資格として以下の要件を満たす必要があります。
- 医師、看護師等、その他の資格を有する者、又はこれに準ずるもの
- 介護実務経験及び相当の経験を有するもの
- 認知症介護実践リーダー研修を修了しているもの
- 認知症介護基礎研修又は認知症介護実践者研修の企画・立案に参画し、又は講師として従事することが予定されている者
- 地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者
自治体ごとに受講資格や要件が異なる場合があるので、詳細については各都道府県のホームページなどで確認するとよいでしょう。
◎研修の主な内容
研修時間は、講義と演習、施設実習で構成され、およそ300時間程度で通算約9週間ですが、講義や演習が連日行われるわけではなく、また自治体によって受講回数が年に数回しかないためスケジュールの調整が難しい場合あります。
│認知症介護実践リーダー研修
ケアチームにおける指導能力及びチームマネジメント能力を修得するのが目的です。
◎受講資格
介護業務に5年以上携わり実務経験を積み、認知症実践者研修を修了してから1年以上経っている者であること。
◎研修の主な内容
講義・演習55時間程度を9~10日程度にわたって行い、その後3~5日程度の他施設実習、そして自施設において4週間程度の実習があります。全て終えるまでには3か月程度かかります。
│認知症介護実践者研修
認知症の原因となる疾患や容体に応じ、本人やその家族の生活の質の向上を図る対応や技術を修得するのが目的です。
◎受講資格
介護施設等で、認知症介護に携わっている介護職員であること。
◎研修の主な内容
講義と演習35時間ほどを5日にわたって行ったあと、自施設での実習が2週間ほどあります。カリキュラム全体の終了には約1~3か月ほどかかります。
│研修を修了したスタッフを確保するには?
研修修了者は、認知症に関わる施設や事業所にとって配置義務や加算の取得に必要な重要な存在となるのでどこの施設でも求められます。
では、研修を修了したスタッフを確保するにはどうしたらよいのでしょうか。まずは、自施設から研修に出す場合、周りの理解や協力など施設全体でサポート体制を整えることが重要となります。
また、研修受講者には、研修修了後の仕事内容や給与、待遇面などの改善といった、本人がイメージしやすく納得できる具体的な説明があるとなお良いと思います。
一方、新たに求人募集する際には、仕事内容や給与、待遇面は当然のこと、それ以外にも、その人の能力を発揮でき、さらなるスキルアップを目指し、専門性を向上できるような組織作りがわかるような取り組みが重要となるでしょう。
まとめ│今後も増える認知症高齢者の支援に備える
今回、認知症加算の算定要件に触れ、混合されがちな認知症支援における代表的加算の種類とその違い、さらには、認知症加算算定に必要な認知症介護実践者研修等について解説しました。
認知症高齢者を利用者に持つ施設や事業所において、支援に対する対価としてしっかりとした評価があって当然ではありますが、実際には人員確保がままならず非常に苦しい局面にある施設や事業所がほとんどなのではないでしょうか。
今後も増えることが予想される認知症高齢者の支援に対して、しっかり対価を得るためには、自分一人で抱え込まず、色々なサポートをうまく活用することが大切です。
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