プログラムの具体例を解説!中重度ケア体制加算の単位と算定要件
病気や介護が必要になった時でも、住み慣れた生活の場で安心して生活を送り続けたいという想いは誰しもが持っていると思います。たとえそれが中重度の介護が必要な場合であっても、本人の意思を尊重し、自立した生活や社会生活を営むことができるよう支援していくことは非常に重要です。
中重度ケア加算は、中重度のケアが必要な場合であっても住み慣れた生活環境で、いきいきと生活していけるよう支援する体制を整備し、必要なプログラムを実施した場合に算定できる加算です。
ここでは中重度ケア体制加算の単位や算定要件、具体的なプログラム内容について解説します。
中重度ケア体制加算の単位と算定要件
中重度ケア体制加算は、中重度のケアが必要な利用者が社会関係や人間関係を維持しながら在宅での生活を送ることができるよう支援するための加算として創設され、通所介護と通所リハビリテーションで算定可能です。
◎算定単位
- 通所介護 45単位/日
- 通所リハビリテーション 20単位/日
◎人員配置要件
- 通所介護…通所介護に必要な人数に加え、看護職員又は介護職員を2名以上(常勤換算)配置する必要があります
- 通所リハビリ…通所リハビリに必要な人数に加え、看護職員又は介護職員を1名以上(常勤換算)配置する必要があります
◎対象となる利用者の要件
要介護状態区分が3以上の利用者が、全体の利用者に占める割合が3割以上であれば要件を満たし、事業所を利用する全ての利用者が算定対象となります。
│看護師の配置のポイント
中重度ケア体制加算の算定要件として看護師の配置要件には3つのポイントがあります。
- サービス提供時間帯を通じて看護職員を1名以上配置する必要があります
- 専従の看護師であり、他の職務との兼務はできません
- 日ごと又は1日の時間帯によって人員が変わっても、時間帯を通じて看護職員を1名以配置されていれば、加算の要件を満たすこととなります
│要介護3以上の割合を求める計算方法は?
「前年度(3月を除く)」又は「算定日が属する月の前3月」の利用者の総数(以下、実人数又は延数)のうち、要介護3以上の利用者の割合が3割以上であることが重要なポイントです。
【具体的な計算法】
1か月当たりの利用者総数と、そのうちの要支援者を除く要介護3以上の利用者総数から、月平均の割合を計算します。
- 6か月以上のサービス提供実績がある事業所…「前年度の実績で算定する」か「届出月の前3月の実績で算定する」かどちらか選ぶことができます
- 6か月未満のサービス提供実績である事業所…「届出月の前3月の実績で算定する」のみとなっています
◎前年度の実績で算定する場合
計算式:(B÷A)×100
A=(4月~2月までの利用者総数)÷実月数
B=(要介護度3~5の利用者の総数)÷実月数
◎届出月の前3か月の実績で算定する場合
計算式:(B÷A)×100
A=(前3月・前2月・前1月の利用者総数)÷3
B=(要介護度3~5の利用者の前3月・前2月・前1月における利用者総数)÷3
前3か月実績で算定する場合については、届出月以降も、直近3か月間継続的に所定の割合を維持する必要があります。その割合は、毎月ごとに記録を残し、下回った場合は加算の取り下げをしなければいけません。
中重度ケア体制加算におけるプログラムの具体例
ケアが必要な中重度者に対するプログラムの計画を立てる際に、実際にはどのような解釈のもと、プログラムを作成・実行すれば良いのでしょうか。プログラムについて具体例を示しながら詳しく紹介していきます。
│プログラムの狙い
ケアが必要な中重度者で合っても、その人にとって価値のある充実した在宅生活を送り続けることができるようなケアやリハビリを計画的に実施する事が重要となります。
つまりは、これまで築き上げた人間関係、社会生活を維持し続けられるように、その人にとっての興味や価値に基づき、家庭内や地域における役割を持てるような支援や生きがいを持って生活できるような支援が大切です。
たんに画一的な筋力訓練や歩行練習といった心身機能レベルの回復に時間や労力を費やすプログラムではなく、その人にとっての興味や価値に基づき、家庭内や地域における役割や習慣、その人のためのその人らしい目標を設定したプログラムで実施することが期待されます。
│プログラムの具体例
老化や各種疾患によってケアが必要な中重度者は、多くの生活上の不便さを抱えています。入浴や排せつ、食事など生きていくうえで最低限の行為まで他者の手を借りなければいけません。こんな場合でも可能な限り、生活の自立性を高め、さらに自己決定の機会を増やすことが人間としての尊厳を保つことにつながります。
そうした背景をもとに中重度者ケア加算は創設され、プログラムの実施が求められます。以下に具体的な事例を簡単に紹介します。
事例1:庭先の植木の手入れ
ひとり暮らしのAさん(78歳、男性)は、移動は杖を突きながらなんとか歩ける程度で普段は椅子に腰かけ一人ぼんやり過ごすことが多くありました。
通所の送り向かいで小さな木造アパート1階の自宅軒先にたくさんの鉢が転がっているのをみた介護職員は、「かつて趣味として花や植木を育てていたのでは」という推測をたて、この男性に施設の庭先の植木の手入れをお願いすることとしました。するとこの男性は、はじめはブツブツと言っていたものの、施設スタッフで感謝の言葉を毎回かけるようにしたところ、やがて通所に来るたびにすぐに必要な準備を済ませ手入れをするようになりました。
モノの運搬や立ったり座ったりする一連の動作のおかげで歩行は安定し、自宅の物置から必要な材料を持ってきたり、買物には杖を使わず一人で出かけたりと活動的になっていきました。施設利用者からも話しかけられるようなり、仲間と一緒に将棋を楽しむようになりました。
事例2:利用者全員分の湯呑洗い
指先にしびれや痛みを伴い全般的に日常生活動作に介助が必要ですぐに疲れてしまうBさん(94歳、女性)は、「食器洗いくらいはできるのに台所にいれてもらえない」と度々愚痴をこぼしていました。
同居するご家族にお話を伺ったところ「完全に任せられるのであればやってもらいたい。ただ、時間もかかるし汚れがとれておらず、結局洗わなければならず二度手間になるので遠慮してもらいたい」という返事が返ってきました。
プログラムとして通所者全員分の湯呑茶碗洗いをお願いしたところ、毎回張切って行うようになり、指先のしびれや痛みを忘れ、長時間立ったまま作業をこなすことができました。汚れも少ない食器であるため結果に問題はなく、そのことを伝えられた家族は彼女にエプロンをプレゼントしました。
事例3:手持ちの服を利用した更衣動作練習
軽度の右片麻痺のあるCさん(74歳、女性)は、定年まで保険の外交の仕事をしていました。カラフルなスーツがたくさんクローゼットにかかっていることを担当のケアマネジャーから聞いた看護職員が、プログラムとして、手持ちの服を利用した更衣動作練習を立案しました。
着やすくおしゃれな上着を毎回持ってきてもらうようCさんにお願いし、練習を重ねたところ、毎回異なった服を着てデイサービスに来るようなりました。その後、「娘と一緒に車椅子で数年ぶりにデパートにいって服を買ってきた。とても楽しかった」という報告がありました。
中重度者ケア体制加算と認知症加算を併算定する場合
中重度ケア体制加算と認知症加算は併算定が可能です。しかし、両者は類似する加算でもあり、併算定する際には注意しなければならないポイントがあります。類似している主なポイントには人員の配置要件があります。
│「サービス時間帯を通じて看護職員を1名以上配置」について
ここで考えられるのが、併算定しようとした場合、認知症加算における「認知症介護に係る研修を修了している看護職員」を有効活用してサービス提供時間を通じて1名の配置でそれぞれの加算が算定できるのかはないかということですが、算定はできません。
なぜなら、中重度者ケア体制加算の対象看護職員は他の職務と兼務することはできないことになっているからです。このため、認知症加算と併算定する際は、認知症介護に関連したいくつかの研修を修了しているスタッフを別に配置する必要があります。人材不足の現状の中で運営している事業所にとって厳しい課題です。
│「通所介護に必要な員数に加え、看護職員又は介護職員を常勤換算配置」について
「看護職員又は介護職員を常勤換算方法で2以上確保する」については、中重度者ケア体制加算及び認知症加算それぞれに2名以上の配置は必要なく、どちらかで看護職員又は介護職員を常勤換算方法で2以上確保していれば、要件をそれぞれの加算で満たすことになります。
まとめ│介護保険請求の様々な疑問にこたえ、解決に導く
中重度ケア体制加算の単位や算定要件、具体的なプログラム内容について紹介してきました。中重度者のケアを必要とする利用者に必要なプログラムを実施する際に、その人の興味や価値に基づき、その人が持っている残存能力をいかしたサービス提供は、その人の活動や社会参加レベルに良い影響を与えます。
ケアが必要な中重度者に限らず、軽度者であっても利用者のプログラム内容は、その人のそれぞれで彩りが豊富です。プログラムの計画を立てる際に、どのような解釈のもと、プログラムを作成・実行すれば良いのか、少しでも参考にして頂けたらと思います。
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